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こおりやま広域圏には、磐梯朝日国立公園や阿武隈高原中部県立自然公園をはじめとする美しい自然景観があります。四季折々の風情がある山々からは、清流や湧水が数多く流れ出ており、その中でさまざまな滝が形成されています。
山奥でひっそりと流れる滝や清流から、松尾芭蕉などの歴史的な人物にインスピレーションを与えた滝まで、美しい景観がこの地域を訪れる人を魅了しています。
この記事では、こおりやま広域圏内の5つの滝や清流をピックアップしてご紹介します。広葉樹に覆われた滝・清流も多く、新緑から紅葉と季節をこえて楽しめる場所もあり、冬には氷瀑となる滝もあります。
深い森に滝の音を響かせる行司ヶ滝(男滝)
行司ヶ滝は田村市北西部を流れる高瀬川の支流にかかる落差16mの滝です。むかしこの沢で行者が祈願の行をしたこと、藩政時代に相馬藩と三春藩の領地争いの行司をしたといったことが名前の由来といわれています 。
駐車場にはトイレも整備されている
駐車場から行司ヶ滝までの道のりは徒歩でおよそ20分(約820m)、「ふくしまの遊歩道50選」に選ばれたハイキングコースが続きます。
「ふくしま水の30選」の行司ヶ沢の澄んだ流れと、爽やかな森に包まれる遊歩道は、四季折々に美しい風景や鳥のさえずりで楽しませてくれます。
入口からすぐの場所に沢の畔を歩く遊歩道がありますが、進むほどに谷が深くなり、コースの中程にある女滝(落差10m)ではすっかり険しい渓谷の姿となります。行司ヶ沢は風化しやすい花崗岩質の渓谷のため、川床が白く、光の射し込みやすい広葉樹の森に覆われています。深い森にありながら明るく澄んだ美しい景観が特徴です。
遊歩道の入口から15分ほど進んだ場所にある階段を下ると、流れ落ちる滝の音とともに行司ヶ滝(男滝)が姿を現します。元々は10丈8尺(約32m)の滝でしたが、高瀬川電源開発の取水口となったため、現在は半分ほどの落差となっています。
遊歩道は行司ヶ滝の少し先まで続いており、別の沢と合流し、かつて倍ほどあった滝が浸食したことを思わせる大きな空間が広がっています。
取水口の先は高瀬川と合流する浪江町まで道は続き、三境の滝を見ることができます。
※遊歩道として整備されていません。川の増水時には渡れない場所もあります。
国道288号線の田村市都路町の地蔵堂付近から北へ曲がり道なりに進みます(要所に案内板あり)。道なりに数キロ進み、突き当たりのT字路を左折(北側)し、しばらく進むと行司ヶ滝駐車場(無料、トイレの設置あり)に到着します。
※T字路から駐車場までは細い未舗装路となるので、車幅の大きな自動車、最低地上高の低い自動車は通行にご注意ください。
※夏季はアブやハチ、マムシなど危険な生き物もいます。ハイキングの際は服装に注意してください。
岩瀬郡天栄村田良尾を流れる黒沢に架かる落差約10mの二股の滝が明神滝です。道路脇から見られる滝としては大きく、水量の多い梅雨明けから夏にかけては滝から舞い上がるしぶきが陽光に煌めきます。黒沢橋の上から観賞しても迫力を感じることができます。
羽鳥湖から近く、キャンプやサイクリング、二岐山(ふたまたやま)への登山といったアクティビティとあわせて訪問するのがおすすめです。
たもとから見る滝は橋上で見る滝とは印象がガラッと変わり、清浄な渓流の深部に潜り込んだような感覚を得ることができます。
滝が真南を向いているので、光の射し込む正午前後の訪問がおすすめです。
県道235号(羽鳥福良線)から赤石川支流の黒沢沿いに少し入ったところに架かる黒沢橋 のそばに2台程度の車を駐められるスペースがあります。
橋のわきから沢に下りることができますが、足下が滑りやすいので注意が必要です(ソールのしっかりした滑りにくい靴を推奨します)。
公共交通機関はなく車でのアクセスとなります。白河方面からは、国道118号から県道235号で黒沢橋へ。猪苗代湖方面からは県道235号で黒沢橋にアクセスできますが、馬入新田から馬入峠にかけて道幅の狭い箇所があるので通行に注意してください。
朝日に照らされる乙字ヶ滝
乙字ヶ滝は日本の滝百選にも選ばれている阿武隈川唯一の滝で、横幅は約100mにわたります。川の中央が玉川村と須賀川市の境で、かつては竜崎滝や石川滝とも呼ばれていました。川の中程にある巨岩に沿って「乙」の字の形をしていることから、乙字ヶ滝と呼ばれています。
平地にあるため落差は大きくありませんが、阿武隈川の豊富な水量と川幅一杯に広がった滝から轟く音としぶきは壮観です。滝の周辺は公園として整備されており、橋の上、滝の真横、正面とさまざまな角度から眺められることも魅力となっています。
川の中程より左岸側に通る水路は「通船堀割」といい、江戸時代末期に米俵を運搬する荷船の通行を可能とするために、10年をかけて開削されました。
また、808年に弘法大師の開基とされる瀧見不動堂や、松尾芭蕉が奥の細道で「五月雨の滝降りうづむ水かさ哉」の句を詠んだ場所として芭蕉と弟子の曽良(そら)ふたりの石像と句碑が建てられています。
朝焼けに輝く瞬間
阿武隈川が東西方向に流れる場所にあるため、朝焼けや夕焼けの時間帯はドラマチックな光景を見ることができます。
年末年始や桜の時期は色鮮やかなランタンで飾り付けられるライトアップイベントが開催されています。
車でアクセスする場合は、東北自動車道須賀川ICから県道63号線・国道118号線を通り乙字ヶ滝公園へ。またはあぶくま高原道路玉川ICから国道118号線を通り乙字ヶ滝公園へ。無料駐車場があります。
公共交通機関でアクセスする場合は、JR須賀川駅からバスで竜崎経由石川・石川駅前行に乗り約25分、滝山で下車。
東野の清流は、阿武隈山系の標高500m以上の斜面を流れる清流です。明るい広葉樹の森に木漏れ日が降り注ぎ、四季を通じてせせらぎのさまざまな表情を感じることができます。せせらぎ沿いには登山道が通っており、爽やかな森の風と苔に彩られた岩石の間を縫う清流を間近に楽しむことができます。
清流のそばには東屋と長命の清水があり、落ち着いて豊かな自然を感じられます。
駐車場から遊歩道の終点までの約500m(手前の駐車場からは約870m)の間に大小さまざまな滝が続きます。滝の中には付近にあった旧玉川村立須釜小学校四辻分校の児童により名前がつけられたものもあります。滝や渓流のように深い谷の流れではないため、そばに寄って触れられる小さな滝も多く、防水のカメラやスマートフォンがあれば水中の様子を観察することもできます。
冬には氷瀑となった姿を見ることができます。
※チェーンスパイクなど滑り止めが必要です。
あぶくま高原道路石川母畑ICから車で約15分(道路沿いに案内標識あり)。林道に入ったところに東屋と駐車場があり、さらに350mほど進むと「東野の清流」の石碑、トイレ、駐車場があります。
山鶏滝と近く、車で25分ほどの距離なので合わせて訪問することもできます。
山鶏滝(やまどりたき)は阿武隈川水系の北須川沿いの遊歩道を750mほど歩いた先にある、高さ約10m落差約8mの滝です。滝の正面には橋が架かり、橋上から迫力のある音を轟かせ流れ落ちる姿を間近で眺めることができます。
滝の畔に建つ龍鶏山不動尊
左岸(上流に向かって右手側)には701年に建立されたと言われる龍鶏山不動尊、右岸には東屋があり滝の流れを落ち着いて臨むことができます。
両岸に遊歩道があり、上流には男滝と女滝と呼ばれる二つの滝があります。それぞれ間近から眺めることができるのも山鶏滝の魅力です。右岸側はやや高い位置から滝を見下ろすので渓谷の深さを感じられます。一方、左岸側は渓流のそばまで下りられるため、迫力のある渓谷美をさまざまな角度から楽しむことができます。(足下が滑りやすいため注意して散策してください。登山靴など足下のしっかりした靴をおすすめします。)
ふくしまの遊歩道50選、福島遺産100選にも選ばれています。
冬には氷瀑となった姿を見ることができます。
※チェーンスパイクなど滑り止めが必要です。
車でアクセスする場合は、あぶくま高原道路石川母畑ICまたは平田西ICから県道42号線(矢吹小野線、案内表示あり)で約10分。遊歩道入口に駐車場があります。 公共交通機関でアクセスする場合は、JR水郡線磐城石川駅よりバスで20分、徒歩で20分。
東野の清流と近く、車で25分ほどの距離なのであわせて訪問することもできます。
※本記事で使用している地図は地理院地図にルートを加工して作成。
( https://maps.gsi.go.jp/#18/37.293089/140.058858/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1 )