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こおりやま広域圏は、古き良き文化の宝庫です。一万年の歴史を刻む遺跡や、坂上田村麻呂や小野篁(たかむら)にちなんだ地名を持つ自治体や地域、源氏にまつわる行事や風習などが数多くあります。これらの伝統は、古代から現代に至るまでの時間の流れの中で息づいており、今なおその生き生きとした息吹を感じることができます。こおりやま広域圏で歴史と現代が交差する伝統文化や寺社に触れてみませんか。
康平7年(1064年)に創建された古殿八幡神社では、毎年10月の第2日曜日とその前日に、宵祭と本祭の一環として、馬上から弓を射る神事「笠懸・流鏑馬」が執り行われています。
流鏑馬大会秋の陣、日頃の研鑽を披露する機会に参加者の表情は真剣そのもの
宵祭の土曜日の午前中には流鏑馬の後継者育成を目的とした「流鏑馬大会秋の陣」が催されます。神事である「笠懸・流鏑馬」と違い、得点制の競技で若手からベテランまで真剣な面持ちで腕を競い合います。
観衆と馬場はわずかロープ1本で隔てられる
午後には笠懸・流鏑馬や流鏑馬太鼓などが行なわれます。馬場と観衆の間はロープ1本が隔てるのみで、目の前を駆け抜ける騎馬の迫力が古殿八幡神社の流鏑馬の醍醐味です。
本祭の日曜日は、朝から神社周辺に和やかながら少し緊張した空気が漂っています。祭典行列を皮切りに、流鏑馬太鼓や馬場横の弓道場から響く弦音が境内の熱気を高めていきます。
午後になり、いよいよ神事が始まると、秋晴れの空に映える装束に身を包んだ役者(紺と橙の衣装に塗笠を被っているのが役者)、副役者の誇らしげな姿に観衆の視線が注がれます。
激しく駆ける馬上から的を射るのは至難の業で、一の的、二の的、三の的と矢が見事に的を射貫くと会場には歓喜の声が湧きます。
笠懸で放たれる鏑矢の音とともに、力強い足音を響かせながら駆け抜ける流鏑馬は、雄壮な武者の姿そのものです。
交通アクセス | 車:あぶくま高原道路、玉川ICより35分 電車:JR水郡線、磐城石川駅からバスで約45分、古殿下車 |
駐車場 | 下山上農村広場ほか、本祭には臨時駐車場あり ※ 事前に古殿町HPにて確認の上、現地誘導員の指示に従ってください。駐車場から無料シャトルバス運行 |
松明あかしは、戦国時代の末期に須賀川城主の二階堂家と奥羽の伊達家との間でおこった悲劇的な戦の戦没者を悼む行事です。両軍の隔てなく鎮魂の思いをのせ夜空に松明を灯します。
江戸時代には、旧暦の十月十日に慰霊のため「炬火(きょか)」を投げ合っていたと伝わります。その後、時代を経て、現在は11月の第2土曜日に五老山(翠ヶ丘公園)で「松明あかし」として執り行われています。
松明あかしは、高さ8メートル、重さ1トン、直径1.2メートルの巨大な松明が五老山の上に十数本も並び燃えさかる火祭りです。多いときは25本にも及ぶ松明が一斉に燃えさかる様は必見です 。
昼間、100人の担ぎ手が須賀川市中心部を練り歩き、五老山に運びます。夜が訪れると二階堂神社から採火した御神火を五老山の御神火台に運び、御神火台から分火棒でそれぞれの松明に灯します。
力強く響く松明太鼓とともに、夜空を照らす巨大な松明が並び立つ姿はまさに荘厳雄大。鎮魂の炎が、勇ましくも厳かな祭りです。
交通アクセス | 車:東北自動車道、須賀川ICから約10分 電車:JR東北本線、須賀川駅から徒歩10~15分 |
駐車場 | 臨時駐車場あり ※ 当日は交通規制あり、須賀川市HPを確認してください |
岩角山は紅葉の名所としても知られる
岩角山岩角寺(いわつのさんがんかくじ)は天台宗の総本山である延暦寺の直末寺で、古くから岩角山として親しまれてきました。岩角山は花崗岩質の標高337メートルの山で全山が名勝天然記念物に指定されています。
山中に点在する巨石・奇岩には線刻技法で描かれた西国霊場33ヵ所の観世音や菩薩、天王、天神などの808体の仏像や、毘沙門堂や那智堂をはじめとしたさまざまな堂が立ち並んでいます。深閑とした森の雰囲気とあわさり、山全体が一つの霊場として人々の信仰を集めてきた歴史を感じられます。
山頂からは安達太良山や吾妻連峰など奥州の山々が一望でき、自然の美しさを感じられる場所としても親しまれています。
交通アクセス | 車:東北自動車道、本宮ICから約15分 電車:JR東北本線、本宮駅から車で約15分 |
駐車場 | あり(50台) |
観音堂
小野町のシンボルの一つ、東堂山(標高668メートル)の中腹にある満福寺。創建は古く、奈良の高僧徳一大師によって大同2年(807年)に開かれたといわれています。山中には杉の巨木や多くの堂が建ち並び、1200年を超える歴史の重みを感じることができます。
静閑な森の中にたたずむ満福寺の鐘楼
なかでも仁王門の先にある鐘楼は、近世木造建築の粋を集めたと伝わり、ひときわ神秘的な佇まいを見せます。
満福寺は伝承を伝える古刹であるだけでなく、今なお信仰を集めていることを象徴するのが観音堂の奥に奉安される羅漢像です。昭和60年から奉安が始まり、巨岩に刻まれた岩不動の裾を広げるように500体以上の羅漢像が並ぶ様は圧巻で、それぞれに表情豊かな羅漢像からは平安を願う人々の思いが伝わってきます。
交通アクセス | 車:磐越自動車道、小野ICから約10分 電車:JR磐越東線、小野新町駅から車で約15分 |
駐車場 | あり |
石都々古和気神社(いわつつこわけじんじゃ)は延喜式内社の一つに数えられる古社で陸奥国一宮とされています。
社殿は八幡山の頂上にあり、麓から続く参道は四季折々に桜、あじさい、紅葉と美しい姿を見せてくれます。
石都々古和気神社は考古学的に重要な遺跡でもあり、約一万年前から信仰の対象だったとされています。多くの磐境(いわさか、原始的な祭場)が山々に点在しており、屏風岩、船形岩、鏡岩、亀石、天狗石、石門(鳥居)、さらには三種の神器といわれる剣、玉(勾玉)、鏡等があります。
交通アクセス | 車:あぶくま高原道路、石川母畑ICから15分(社務所まで) 電車:JR水郡線 磐城石川駅から徒歩約11分(社務所まで) |
駐車場 | まちなか駐車場(35台) |
鏡石町の笠石地区、かつて奥州街道の宿場町として栄えたこの地には、今も昔の面影を残す伝統行事があります。毎年10月の第一日曜日、この地区の熊野神社で、素朴でありながら厳かな太々神楽(町指定無形民俗文化)が執り行われます。
出雲流神楽の伝統を守る太々神楽は、神社の秋祭りで披露される特別な舞です。昭和2年にこの地で始まり、一時期の中断を経て昭和51年に復活し、以来、地域の文化として大切にされています。
祭りでは、幣(ぬさ)の舞、剣の舞、扇の舞、大黒の舞などが奉納されます。これらはそれぞれ、神を呼び寄せる、悪霊を払う、豊穣や家内安全を願うなどの意味を持ちます。特に印象的なのは、大黒の舞。かつては餅を観衆にまいていましたが、現在はお菓子をまき、無病息災を願います。
神楽の舞は、大太鼓、堤太鼓、笛の伴奏により、さらに厳かな雰囲気を醸し出します。また、新築などの祝い事がある家では、神社の奉納後に特別に舞が披露されることもあります。
笠石地区の太々神楽は、その素朴さと厳かさで、奥州街道の歴史を感じさせます。
交通アクセス | 車:東北自動車道、鏡石スマートICから10分 電車:JR東北本線、鏡石駅から徒歩約40分 |
駐車場 | なし |
三春大神宮は、元禄2年(1689年)に三春藩三代藩主秋田輝季によって現在地に遷されました。神社の境内には、多くの絵馬や三春町指定の有形民俗文化財である白馬像が奉納され、三春地域が名馬の産地として古くから知られていたことを、訪れる人々に伝えています。
三春大神宮の祭礼は、三春町最大のイベントの一つで、地域の文化と伝統を今に伝える重要な祭りです。この祭りでは、神輿渡御の先祓いとして長獅子が舞い、各地区の山車が練り歩きます。
また、三春大神宮は、「シンメ(神明)様」と呼ばれ、町民から親しまれています。
神社の境内には、たくさんの木々が生い茂り、そのうち町指定天然記念物のモミを含む23本の木々が「三春大神宮の森」として福島県『緑の文化財』に登録されています。
交通アクセス | 車:磐越自動車道、郡山東ICから約15分 電車:JR磐越東線、三春駅から車で約6分 |
駐車場 | あり |
こおりやま広域圏の時代を超えて受け継がれる伝統文化や建築物は、訪れる人々に日本の原風景を思い起こさせてくれます。この地の豊かな自然と歴史の息吹を体験しに、足を運んでみませんか?